第82章

林田朔夜は、その顔を見た瞬間――全身の血が凍りついた気がした。

柳川夏苑。

知らないはずがない。

藤原承弦が胸の奥に隠し続けてきた、高嶺の花。

朔夜が三年かけて真似し続け、それでも決して「なれなかった」人。

よく見れば、確かに似ている。眉と目。輪郭。唇をきゅっと結ぶ癖まで、どこか重なる。

――皮肉だ。

口元を引きつらせても、笑いにはならなかった。

この二日、承弦はずっと「会社が立て込んでる。帰れないから先に寝てろ」と言っていた。

朔夜は信じた。

むしろ、どうやって驚かせようかと、必死に考えてさえいた。

……違った。

彼は、自分の高嶺の花のそばにいたのだ。

その場に立...

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