第90章

翌朝早く、雨宮淑は病院へ駆けつけた。

病室のドアを押し開けると、林田朔夜がベッドの背に身を預けていた。顔色は血の気が失せ、紙みたいに白い。

「朔夜」

雨宮淑は足早に近づき、その手をぎゅっと握る。

「大丈夫? つらくない?」

林田朔夜は顔を上げ、雨宮淑を見た。

疲れ。虚ろさ。そこに、薄い薄い距離感が重なっている。

「平気」

淡々とした声だった。

雨宮淑はその様子を見ただけで目元が赤くなる。

一生、雷のように決断してきた女が、いまはその手を離そうとしない。

林田朔夜は雨宮淑の焦りを見つめながら、胸の奥が複雑にざわついた。

この女は――間接的に、自分の実の母を死に追いやった...

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