第93章

林田朔夜は必死に身をよじった。

けれど藤原承弦は、彼女の身体をきつく抱え込んだまま、容赦なく口づけを深くしてくる。

朔夜は腹を括り、思いきり噛みついた。ぷつり、と。血の生臭い甘さが、ふたりの唇と歯のあいだに広がる。

承弦は痛みに眉を歪めても、離そうとしない。

――三年前の夜が、ふいに脳裏をよぎった。

車の窓がすっと下がり、藤原承弦が感情のない目でこちらを一瞥した。あの瞬間から、私は「獲物」になった。

契約書一枚で、三年分の時間を買われた。

藤原承弦は、私が絶対に離れないとでも思っているのだろうか。

あんなにみじめだった過去があって、それでもいつしか、どうしようもなく愛してしま...

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