第97章

天野風希が顔を上げると、藤原承弦が雨の中に立っていた。

黒いトレンチコート。血の気が引いた顔色は、見ているだけでぞっとするほどだ。唇はひび割れ、身体はひと回りどころか、ふた回りは痩せたように見える。魂だけ抜き取られた抜け殻――そんな言葉が、嫌でも浮かぶ。

藤原承弦は墓碑をぼんやり見つめていた。触れたいのに触れられない、とでもいうように。手を伸ばしかけては、途中で止める。空っぽの瞳。

「……何しに来たの」

天野風希は立ち上がり、氷みたいな声で言い放った。

「朔夜を、これ以上惨めにしたいわけ?」

藤原承弦は黙ったまま、反論もしない。

「聞いたよ。朔夜をH島に行かせたの、あんたなんで...

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