第26章

どう見ても、屈強な男の体格じゃない。

米崎梨央は眉をひそめると、ためらいなく近づいて確かめた。スマホのライトを点ける。

光に浮かび上がったのは、七十を優に超えていそうな、ひどく年老いた女性だった。

床に倒れたまま、目は固く閉じられている。苦悶に歪む表情。唇は紫がかっていた。何か言おうとしているのに、意識が朦朧としているせいで、声が一欠片も出ない。

――典型的な心発作の兆候。

梨央は逡巡しなかった。懐から小さな薬瓶を取り出す。

中の薬を指先でつまみ、口に含ませようとした瞬間――少し離れたところから、切羽詰まった怒声が飛んだ。

『おい! 何してる!』

梨央が振り向くと、警備員らし...

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