第78章

米崎雪美は唇をきゅっと結び、顔色を悪くした。

本当は、米崎梨央が腕時計を壊して落ち込んでいるのを見て、ついでに自分の人脈を見せつけてやるつもりだった。ところが相手は、たった一本の電話であっさり片をつけてしまった。

悔しくてたまらないのに、何を言えばいいのか分からない。

『お姉ちゃんって、ほんとすごいね』

雪美は無理やり笑ってみせる。

『時計も直ったし、わたし先に部屋へ戻るね』

背を向けた瞬間、笑みはすっと消えた。胸の奥に残ったのは、ただひとつの思い。

――米崎梨央だけを、こんなふうに得意にさせるわけがない。

雪美が二階へ上がっていくのを見届けてから、清水恵美は閉ざされた扉へ目...

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