第8章

米崎梨央は頬がかすかにむずがゆいのを感じた。新村慎之介の視線に捉えられている――そう自覚した瞬間、滅多にない居心地の悪さが胸の奥に生まれる。

……腹立たしい。

こんな感覚を味わわせる相手など、指で数えるほどしかいない。

彼女は湯呑みから立ちのぼる湯気を見つめたまま、淡々と言った。

「そういうことは存じません。新村さん、聞く相手をお間違えでは」

「そう?」新村慎之介は口元だけで笑う。「米崎さんなら何でも知ってると思ってた。……見た目からして、相当できる人に見えるから」

米崎梨央は唇の端をわずかに引き、ぎこちない笑みを浮かべる。声には相変わらず感情が乗らない。

「買いかぶりです」

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