第10章 彼がプレッシャーをかけている

藤堂という男?

藤堂和也?

その名が再び高坂詩織の心に浮かぶと、奇妙な恍惚感に襲われた。

そして、女の束の間の放心を、一条彰人はすべて見逃さなかった。

「呵、図星か」

高坂詩織が休暇を取って春苑団地へ向かったことは、彼は知っていた。

だが、彼が「贈り物」を受け取った後、特別補佐に調査させなければ、昨日のあの男も春苑団地へ行っていたことまでは知る由もなかっただろう。

たった一度会っただけで、彼女は胃癌を理由に離婚を切り出したのだ。

リビングにはソファ脇のフロアスタンドが一灯ついているだけで、ぼんやりと柔らかな光が満ちている。

一条彰人は少し離れた場所に立ち、その顔の半分は影に沈...

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