第14章 彼女はもう妊娠している

高坂詩織の顔から、ただでさえ残り少なかった笑みが完全に消え去った。

一条彰人が足早にエレベーターへと向かい、高坂詩織はその後を追うしかなかった。

彼らが日帰りであることは知っていた。一条彰人には夜、会食の予定があるからだ。

しかし、お姑さんである藤崎素子が東都市に来ているとは知らなかった。

お姑さんと食事をすると聞いた途端、高坂詩織の先程までの喜びは跡形もなく消え失せていた。

車に乗っても、心はまだ重く沈んだままだ。

このお姑さんは、昔から高坂詩織のことが好きではなかった。

藤崎素子は若い頃、ちょっとした風雲児だった。自分がお嬢様でありながら、家同士の縁談を断り、一...

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