第20章 彼女と争わない

藤崎素子の視線が向けられた瞬間、高坂詩織の心臓がどきりと跳ねた。

その上、一条彰人が今この場を離れて綾瀬しずかと食事に行き、自分一人を残して厄介な姑の相手をさせていると思うと、表情が崩れそうになるのを必死でこらえた。

幸いにも藤崎素子はすぐに視線を外し、彼女を見ることもなく、自身のスカートの裾を整えながら、優雅だが含みのある口調で言った。

「妊娠したことには見直したけれど、できれば男の子を産んでちょうだい」

「新しい時代だとは言うけれど、大家族というのはいつだって古いものよ。あなたが男の子を産めば、彰人もきっと御隠居様のところで株が上がるわ」

高坂詩織はそれを聞きながら、「はい...

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