第23章 彼女に謝りに行く

その冷たい言葉と仕草は、高坂詩織の心を粉々に砕いた。

一条彰人は手を引っ込めたものの、心の内ではひどく苛立っており、目の前の女をじっと見つめた。

彼女は目尻を赤くし、泣き出すと鼻の頭まで赤くなる。どこか楚々として憐れみを誘う風情があった。

「俺の前で可哀想ぶるのはやめろ」

高坂詩織は手の甲で涙を拭い、鼻をすすると、押し殺した声で言った。「してないわ」

自分は綾瀬しずかではないのだ。泣けば男が庇ってくれるような存在ではない。

彼女の涙は、一条彰人にとって、おそらく避けたくて仕方がない毒薬のようなものなのだろう。

そこへ藤崎素子が持ってきた堕胎薬のことを思い出し、高坂詩...

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