第26章 行くか行かないか

朝六時、先に電話をかけてきたのは中山隆だった。

「奥様、お車がすでにお待ちです」

高坂詩織の眠気は完全に吹き飛んだ。昨夜の二人の口論を思い出す。

一条彰人の性格からして、このまま引き下がるはずがない。そして彼は、高坂詩織が従順に従うと確信しているに違いない。

しかし、高坂詩織は昨夜のうちに、もう考えを固めていた。

一条彰人が離婚に同意しない以上、残された時間で自分の利益を手にすることは、決して非難されるべきことではないはずだ。

「中山隆、彼に代わってちょうだい」

中山隆は一瞬躊躇したが、数秒後、電話の向こうから聞き慣れた声が響いた。

「一条彰人、出張に付き合ってあげ...

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