第42章 彼には心があるのか

一条彰人が唯一予想だにしなかったのは、この綱引きに、まさか別の人間が参戦してくるとは思わなかったことだ。

「桐谷和臣……君がどんな動きを見せるか、ただ見させてもらうとしよう」

その言葉を心の中で繰り返し、一条彰人はしばし沈黙した後、仕事に戻った。

一方、こちら。

高坂詩織は丸一日、病院に留め置かれていた。彼女の聴取を担当した若い女性職員が、ずっと病室にいる。

一種の監視と言えるだろう。

だが、心から希望が消え失せた今、高坂詩織はそのことすらさほど気にならなくなっていた。

それゆえに、翌朝早く、その女性職員が一本の電話を受けて立ち上がり、高坂詩織に帰っていいと告げた時、...

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