第50章 二つの線

電話を取った瞬間、一条彰人はすでに携帯を握りしめて窓辺へと歩み寄っていた。

口元には勝算を確信した笑みが浮かんでいる。だが、よく見ればそこには微かな苦渋の色も滲んでいた。

「私の記憶違いでなければ、桐谷社長と私はこれまでずっと競争相手だったはずですが。どうして突然お誘いを?」

彼に今回の通話の詳細を記録するつもりはなかった。

二人のビジネスマンが電話口ですべてを話し尽くせるはずがない。

案の定、桐谷和臣は笑って言った。「我々は皆、名利の世界の人間です。一条社長なら、その理由は自ずとご存知でしょう」

一条彰人は目を細める。「桐谷グループは最近上場したばかり。開拓すべき市場が...

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