第51章 両方の裏切り

桐谷桃子が、高坂詩織に悪戯っぽくウインクをする。

高坂詩織は彼女をしばらく見つめた。目の前の少女には確かにどこか見覚えがある気がするが、すぐにはどこで会ったのか思い出せなかった。

「先輩、前に半年間、先輩の大学に交換留学してたんです! 半年間の芸術専門活動で、先輩とは二回お会いしました!」

高坂詩織がどうしても思い出せないのを見て、桐谷桃子は小声でヒントを出した。

その言葉で、高坂詩織の脳裏にぼんやりといくつかの記憶が蘇る。

彼女も大学は春川市で過ごした。当時、大学の芸術デザイン学科はそこそこ有名で、交換留学やサマーキャンプなどの活動も数多く行われていた。

ある学期、彼女...

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