第70章 彼女に離婚させる

その言葉を、高坂詩織は苦笑いを浮かべながら口にした。

桜井千歳はそれを聞いてはっとし、複雑な表情で高坂詩織を見つめる。

彼女は手を伸ばして親友の長い髪を撫で、そっと言った。「詩織ちゃん、あまり自分を追い詰めないで」

「私はあなたにあのクズ男と離婚してほしいけど、あなたが不幸になるのは望んでない」

親友として、桜井千歳が知らないはずはない。物事には、あまりにも難しいことがあるのだと。

彼女は唇を尖らせ、さらに慰めた。「犬だって、数年飼えば情が湧くものよ。ましてや男ならなおさら」

高坂詩織は思わず笑ってしまった。考えてみれば、自分と一条彰人との婚姻関係においては、自分の方こ...

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