第123章 既婚者は既婚者らしく

 着替えて出かけるつもりだったが、森遥人にそうされてしまい、鈴木莉緒はベッドに横たわっていた。

 対する森遥人は元気いっぱいで、部屋着のままベッドに横たわる女を見つめると、身を屈めて彼女の顔にかかった髪を耳にかけてやり、そっと尋ねた。

「出かけるか?」

「どこへ?」鈴木莉緒は目を閉じたまま、彼の方を見ようとはしなかった。

 キスを交わした時に伝わってきた、互いに愛し合っているかのような感覚が、今になってますます鮮明に蘇ってくる。目を開ければ、自分で作り上げたその幻想が壊れてしまうのではないかと、彼女は少し怖かった。

 大抵の女は自分を騙すのが好きだ。美しい光景は、一日でも長く留めておき...

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