第321章 白石綾子は何も知らない

車は「雲居」を出た。外には抜けるような青空が広がり、雲は誰かの手でなぞられたかのように、一筋の白い紗となって空に漂っている。とても美しい光景だった。

森遥人の携帯電話が鳴った。会社からの電話だ。

彼が通話している最中、不意に耳をつんざくような急なクラクションが響いた。鈴木莉緒がふと見ると、横から大型トラックが助手席側めがけて突っ込んでくるのが見えた。

鈴木莉緒は悲鳴を上げた。

森遥人もそれに気づいた。とっさにハンドルを左へ切る。だが、運転席側は植え込みに迫っていた。

事態は切迫していた。トラックを避けるためにハンドルを切りすぎたのだ。運転席側が植え込みに激しく衝突する。スピードが出て...

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