第324章 どうして赤くならないのか

鈴木莉緒は慎重でありつつ、同時に不注意でもあった。

水だけでなく、シャンプーの泡までが頭頂部から顔へと流れ落ち、森遥人の鼻孔を塞いで呼吸を困難にさせていたのだ。

彼は手で顔をぬぐった。彼女の看病には、もう耐えられそうにない。

「これは俺への仕返しか?」

「違うわ」

鈴木莉緒はそこでようやく顔を覗き込んだ。彼の目元が少し赤くなっているのは、泡が入ったせいだろうか。

「あら、どうしてこんなことに?」

鈴木莉緒は慌ててタオルで彼の顔を拭いた。

「ごめんなさい、人の世話なんてしたことなくて」

森遥人は深呼吸し、タオルを顔に押し当てたまま視線を下げた。股の間には白い泡がたっぷりと降り積もってい...

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