第329章 私は引っ越す

「見事な言い草ね」

浅野静香は鈴木莉緒に向かって親指を立ててみせた。「あの子、なんだかきな臭いっていうか、猫かぶってる感じがするのよね」

鈴木莉緒は笹川久志が新しく作ったカクテルを口にした。入り口は清涼感と甘さがあり、喉を通ると少しピリッとし、胃に落ちるとじんわりと温かくなる。

彼女は笹川久志が酒に何を入れたか、決して尋ねない。彼は商売人だ。まさか店で出すものに毒や薬を盛るわけがないのだから。

「でも、時々すごく可哀想にも思えるの」鈴木莉緒も女だ。情に脆いところがある。白石綾子がどんな目に遭ってきたのか想像すると、どうしても非情になりきれない。

「本当にただ可哀想なだけならいいけどね...

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