第335章 生死を経験して それでも別れられる

言い争いもなければ、長々とした議論もない。

鈴木莉緒は、またしても「雲居」を去った。

月島響子には理解できなかった。なぜ彼女が、出ていかなければならないのか。

二人の関係は修復されたように見えたし、生死を共にするような修羅場もくぐり抜けたはずだ。それなのに、離れるというのか。

「男女の仲ってのは、本当に複雑ね」

月島響子はしみじみと呟いた。自分にはそんな相手がいなくてよかった、とすら思う。

鈴木莉緒は笑っていた。今この瞬間、彼女は憑き物が落ちたように晴れやかな顔をしていた。

以前の彼女は、自分は物事に執着せず、去る者は追わないタイプだと思い込んでいたが、実際はそれほど簡単なことで...

ログインして続きを読む