第349章 遅すぎた深い情は草よりも安い

「浅野照輝」は酒を飲みながら、「安斉ノア」にチップを弾んだ。

歌が良ければ、客はチップを出すものだ。

だが、その額の大きさに「安斉ノア」は目を丸くした。

「ありゃ口説いてるな」

男である「笹川久志」には、男の心理が手に取るようにわかるらしい。

「鈴木莉緒」には「浅野照輝」の真意が読めなかった。ただ純粋に遊びに来ているだけにしか見えないのだが。

「まともな付き合いなら放っておくけど、変な下心があるようなら『安斉ノア』に釘を刺しておかないとね」

彼女はこの店の専属歌手だ。彼女の身の安全を守るのも、店側の義務である。

「もちろん」

カウンターに両手をつき、「笹川久志」は言った。

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