第61章 彼はただ口が硬いだけ

「ちょっと用事ができた」

 森遥人はそう言った。

 鈴木莉緒には予感があったが、何も聞かずに頷いた。

 そして、森遥人が家を出る前に、彼女はまずトイレへと向かった。

 トイレのドアを閉めたとき、外の玄関ドアが閉まる音が聞こえた。

 鈴木莉緒は思わずため息をついた。

 口では人情味のないことを言いながらも、行動は依然としてあれほど熱烈なのだ。

 彼女の強がりは、まるで泡でできた鎧のよう。あっけなく砕けてしまう。

     。

 白石知世が交通事故に遭った。

 昨晩の騒動は、彼女が原因だったのだ。

 鈴木莉緒は、白石知世のSNSでそのことを知った。

 投稿されたのは午前四時。顔も怪我も写っては...

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