第11章

「綾音、本当の話をしよう」

温かい光に満ちた意識の空間で、私は綾音の魂をそっと抱き寄せ、静かに語りかけた。

「俺たちが初めて出会った、あの日のことから」

綾音は黙って頷き、その澄んだ瞳で私をじっと見つめている。

「医学部一年生の秋、君は痛々しいほど痩せていて、神経解剖学教室の最後列に独りで座っていた。ご両親が『医療事故』で亡くなったばかりで、誰も君の面倒を見る者はいなかったのに、君は学部で最も優秀な学生だった。特に、最難関と言われた神経解剖学では、いつも首席だったね」

「藤井の奴が、どっちが君を射止められるか賭けをしよう、なんて馬鹿なことを言ってきたんだ。身の程知らずだ...

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