第3章

鈴木涼子?

その名を聞いた瞬間、私の思考は完全に停止した。

検死台に横たわるのは、疑いようもなく私の身体だ。なのに、なぜ。どうして鈴木涼子だと?私は半透明の自分の手を見下ろす。魂であるという現実が、冷たく肌を撫でた。車輪に轢かれ、見る影もなくなったあの亡骸は、間違いなく私、中村綾音なのだ。

「鈴木涼子……」

誠治がその名を低く繰り返し、深く眉を顰める。彼は身元を示す札を、何かを穿つように見つめていた。その心の揺らぎが、私にまで痛いほど伝わってくる。

そうよ、誠治。あなたは困惑するべきだ。そこにいるのは鈴木涼子などではない。あなたの妻、中村綾音なのだから!

「中村先生...

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