第5章

誠治は私の携帯を握りしめ、その淡いピンク色のケースを親指の腹で、まるで壊れ物を慈しむかのようにそっと撫でていた。

彼の目元は赤く充血し、絞り出すような声が静寂に響く。

「綾音……どうか、どうか無事でいてくれ。頼む、待っていてくれ。もう少しだけ……」

その声は、後悔と自責の念に引き裂かれた男の、悲痛な祈りそのものだった。

彼が携帯を大事そうに両手で包み込む姿を目の当たりにし、私は悟った。私は彼の苦悩も、孤独も、その心の奥底にある本当の想いも、何一つ理解していなかったのだ。

その時、ドアの鍵が回る音がし、高橋理沙が買い物袋を提げて部屋に入ってきた。彼女は誠治の手にある携帯に...

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