第6章

誠治の後を追って、私は慌てて病院へと戻った。深夜の病院は、まるで巨大な生き物が息を潜めているかのように静まり返っている。その中で、倫理委員会のオフィスだけが、まるで手術室のように冷たい光を放っていた。

誠治が重いドアを押し開けると、金縁の眼鏡をかけた中年男性がデスクの後ろに鎮座していた。倫理委員会のトップ、渡辺だ。その表情は能面のように硬く、手元には誠治の運命を左右するであろう書類の束が置かれている。

「中村先生、どうぞ」渡辺は顎で向かいの椅子を示した。尋問が始まるのだ。

誠治が椅子に腰を下ろすと、私は彼のそばにふわりと浮かんだ。誠治の顔には、罠にかかった獣のような警戒と困惑が...

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