第112章

「林田美玲?」

 田中美咲の顔に、一瞬だけ困惑の色が浮かんだ。演技にしては出来すぎている。嘘ではないようだ。

 私は鼻を鳴らし、冷ややかに言い放つ。

「とぼけるのはよしなさい。打ち上げの夜、あなたが何かを持って林田美玲の後について個室に入っていったのは分かってるのよ。中で何をしていたの?」

 田中美咲はしばらく考え込み、ようやく思い当たったように口を開く。

「あの夜のことですか?」

「そうよ」

「……あの夜、美玲さんに言われて個室に物を届けたんです。でも、すぐには出してもらえなくて、ずっとドアの前に立たされていました」

 私は彼女の顔をじっと見つめる。この女が言うことを鵜呑み...

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