第186章

帰宅すると、北川歩美はまだ眠りの中だった。

この数ヶ月、彼女は片時も離れず私の護衛をしてくれていたのだ。常に気を張り詰めていた反動に加え、昨晩あけた酒の酔いも残っているのだろう。その寝顔には深い疲労が滲んでいる。私は彼女を起こさず、そのまま休ませておくことにした。

その時、母から電話がかかってきた。

「由依、ご飯は食べた?」

私はこめかみを軽く揉みながら答える。

「……今、起きたところ」

林田翔太との離婚について、直也たちにも伝えなければならないと意識したのは、その瞬間だった。

憐と美波はまだ幼く事態を飲み込めないだろうが、長男の直也は違う。父親と離れて暮らす意味を理解し、彼な...

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