第23章

松本弘之は得心がいったように頷いた。どうやらとっくに知っていて、私に確認したかっただけのようだ。

私達三人が席に戻ると、林田翔太は姉の林田美玲を見ても少しも意外そうな顔をしていなかった。これで、彼らが事前に約束していたことは明らかだった。

二人はそれとなく視線を交わすと、それぞれの席に着いた。

しかし、林田翔太の視線は不意にまた松本弘之へと向けられた。「なんだかこの兄さん、見覚えがあるな。俺たち、どこかで会ったことないか?」

その一言に、私と小林奈菜は肝を冷やした。もちろん林田翔太は彼に会ったことがある。それどころか、一度ならず訪ねてきたことさえあるのだ。

すると意外にも、林田美玲...

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