第287章

あらためて、私はそう痛感した。

「もしあの時、西田蓮が帰ってくるのを信じて、もっと毅然と待ち続けていたら……今という結果は違っていたのかもしれない」

 道端に立ち、遠くを流れる川面を眺めながら、私は隣にいる小林奈菜にそう零した。

 この言葉は、これまで口にしてきた感傷とは少し意味合いが違う。

 今の林田翔太との結婚さえ避けていれば、これほどの泥沼に嵌まることはなかった――というだけの話ではないのだ。

 ただ純粋に思う。あの時「待つ」という選択をしていれば、今の石原実花のように、もっと穏やかで幸福な人生を手にできたのではないか、と。

 何も心配せず、心安らかに過ごせる日々……。

...

ログインして続きを読む