第370章

私は声を潜め、西田蓮に耳打ちした。「彼ら、誰かを待っているみたいだわ。気をつけないと」

西田蓮は小さく頷く。

「松本弘之に指示して、ここの警備は強化させてある。何事もないはずだ」

松本弘之がついているなら――私はようやく安堵の息を漏らした。

だが、その安らぎは長くは続かなかった。突如、入り口付近が騒然となる。

黒ずくめの男たちが数人、荒々しく押し入ってきたのだ。手には棍棒が握られ、その形相は凶悪そのものだった。

近くにいた客から悲鳴が上がる。

会場は瞬く間にパニックに陥り、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。場内は収拾がつかないほどの混乱に包まれた。

思わず眉をひそめ、歩み...

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