第434章

西田蓮が背後から私を抱きすくめ、頭頂に顎を乗せた。「俺も行く」

「いいえ」私は背中に回された彼の手首を掴む。「彼女が会いたがっているのは私だけ。蓮はあの『漁船』を調べて」

 林田の本邸では、藤の花が咲き誇っていた。

 林田の母親が去った後も、彼らはこの屋敷を手放すどころか、改装まで施していたようだ。

 私が足を踏み入れると、林田美玲が自ら茶を点てているところだった。

 手首の翡翠の腕輪が、動作に合わせて涼やかな音を立てる。

「北村由依、知ってる? 翔太は子供の頃、私が淹れたお茶が大好きだったのよ」

 茶器を持ち上げて香りを嗅ぐ。異臭はしない。

 だが、カップの底には小さな文字...

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