第517章

胸の中がぐちゃぐちゃだった。中の様子を確かめたい気持ちと、下手な選択をして私と蓮まで危険に巻き込まれるんじゃないかという恐怖が、せめぎ合う。

 かといって、いつまでも店の入口に突っ立っているわけにもいかない。そんなことをしていたら、かえって怪しまれるだけだ。

 考えていられる時間は、ほんの数秒しかなかった。

 ──もういい。虎穴に入らずんば虎子を得ず。

 私は蓮の腕に自分の腕を絡め、そのままバーの中へと足を踏み入れた。返事の代わりに行動で示す。

 蓮が、落ち着けと言うように私の手の甲をぽん、と叩いた。

 昼間だからか、店内の客はまばらだ。それなのに照明は妙に暗く、薄闇がねっとりと...

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