第10章 彼女は病気になった

午後の陽射しが斜めに社長室へ突き刺さる。山﨑蓮は三度目、スマホを机に叩きつけた。

「……まだ出ないの?」

下山柚奈が心配そうに眉を寄せる。

「蓮、焦らないで。美桜、きっと気持ちが落ちてるだけ。だけどさ、残りの重要顧客の資料、引き継ぎがないと回らないの。みんな待ってるんだよ」

「……よくもそんな真似ができたな。誰が休みを許可した?」

山﨑蓮が勢いよく立ち上がる。椅子が床を引っかき、耳障りな音が廊下にまで響いた。

「休むだけならまだしも、連絡もつかない? 秘書の心得、全部忘れたのかよ」

吐き捨てた瞬間、脳裏に昨日の谷口美桜の顔がよぎる。

青白い頬。リビングの薄暗い灯りの下で、彼女...

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