第109章 お前という泥棒

オークション当日、ディンティエン・オークションの会場は立ち見が出るほどの満員だった。

谷口美桜はぐるりと見回す。想像していた以上に、顔ぶれが濃い。昨日電話を寄越してきた地元の会社が五、六社――それどころか、わざわざ地方から飛んできた連中までいる。

ざっと探しても、山﨑グループの姿はない。

「山﨑グループ、来てないの?」

川原遥香が身を寄せてきた。

「変だよね。あそこが一番、このロット欲しがってるはずなのに」

谷口美桜は答えず、視線だけを人波の上に滑らせる。

――いた。

葉山賢人。

後方の席に座り、グレーのスーツ姿で、手元のオークションカタログに目を落としている。視線に気づい...

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