第113章 子どもの父親はあなたです

再び留置所へ連れてこられた谷口美桜は、見慣れた顔を目にした。刑務官の田村玲子だ。

田村玲子は彼女を見るなり、何か言いかけては飲み込むような表情をした。けれど結局、ただ一歩近づいてくる。

「送っていく。行こう」

谷口美桜は小さく頷き、何も言わなかった。

留置所の扉の前まで来たところで、田村玲子がようやく声を落とす。

「……なんでまた入ってんの。弁護士、つけなかったの?」

「つけた。でも、会えなかった」

谷口美桜が囁くように答えると、田村玲子は左右をさっと見回し、彼女の手にチョコレートを二つ押し込んだ。

「今日は気をつけて」

それ以上は何も言わず、田村玲子は鍵を回して扉を開け、...

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