第136章 必要ない

医師のオフィスで、谷口美桜は小山海斗の向かいに座り、スマホをきつく握りしめていた。

「美桜。梅子ママの病気は……覚悟しておいたほうがいい」

小山海斗は顔から笑みを消し、医者特有の硬い表情に切り替える。

「特発性小脳萎縮症だ。それも最近、症状が急に悪化してる。進行がかなり速い」

谷口美桜の呼吸が、喉の奥で止まった。――その病名が意味する重さくらい、彼女にも分かる。

「発症率自体が低い。いわゆる希少疾患だ。だから治療も難しい」

小山海斗は前田梅子の脳画像を取り出し、机の上に置いた。

「現状、海外でも基本は症状を抑える治療が中心だ。進行を遅らせるのが精一杯で、根本的に治す方法はない」...

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