第14章 離婚しよう

山﨑蓮は谷口美桜の背中を見つめた。胸の奥を、何かに乱暴につかまれたみたいに痛む。

呼び止めたかった。

「もういい、出前にしよう」とか――「一緒に外で食べよう」とか。

なのに口から出たのは、

「早く作れ。腹減ってんだ」

キッチンのほうで蛇口がひねられ、水の走る音がする。鍋やボウルが触れ合う、かすかな金属音。

下山柚奈が蓮の横に歩み寄り、声を落とした。

「蓮……美桜に、ちょっと厳しすぎない? 具合悪いんでしょ」

山﨑蓮は答えなかった。

ただ、キッチンの薄い背中を見ていた。ゆっくり米を研ぎ、野菜を切り、火をつける。そのひとつひとつが、妙に重たそうで――見ているだけで息が詰まる。

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