第171章 嘘の言葉

谷口美桜は終始、口を開かなかった。目の前の男が、あまりにも胡散臭い。

平井学という名前なら、確かに聞いたことはある。だが、実際に会ったのは初めてだ。

児童養護施設ではその名は半ばタブーで、彼女も松浦先生がぽろりと漏らしたのを耳にして、前田梅子にもかつて忘れられない恋があったのだと知ったにすぎない。

――それなのに。

自分の生い立ちを調べようとした途端、平井学が現れた。そして言うのだ。自分には父親がいる、しかもその父親は大野直哉だ、と。

疑わないほうが無理だった。

「つまり……私の父親が大野直哉で、今の大野家の当主だって言うの?」

谷口美桜が問い返すと、平井学は大きくうなずいた。...

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