第177章 彼女のDNAが欲しい

谷口美桜は山本由樹に抱きかかえられたまま、まだ頭の芯がぼんやりしていた。

山本由樹の身体からふわりと漂う洗剤の匂いが、妙に心地いい。パインウッド系の香りだろうか。胸の奥が、ゆらりと揺れた。

その背後で、ばたばたと切迫した足音がして――直後、何かが割れる乾いた音。

山本由樹の反応は早かった。彼女を抱いたまま、すっと横へ身をかわす。

トレイを持ったスタッフがよろめきながら突っ込んできて、手元のトレイを床へ落とした。乗っていたグラスが、ぱしゃん、ぱしゃんと派手に砕け散る。

「申し訳ございません! 申し訳ございません!」

スタッフは何度も頭を下げながら謝り続け、顔を上げて谷口美桜を見るな...

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