第189章 材料を横取りされる

谷口美桜は彼女を見つめた。静かな眼差し。けれど芯は揺るがない。

「確かです」

川原遥香は数秒、彼女の顔を眺め――ふっと笑った。

「分かった。すぐ伝えてくる」

そう言い残し、踵を返して出ていく。

谷口美桜はその場に座ったまま、窓の外を見た。

この道が、本当に通じているのかは分からない。

それでも、進むしかない。

おじいちゃんのために。おじさんのために。

そして、一度も会ったことのない父のために。

……自分のために。

大野直哉は雲海市に来てから、もう一週間以上が過ぎていた。だというのに、戻る気配がない。

大野文也が何度かそろそろ戻るよう言っても、直哉は「治療方針がまだ固ま...

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