第198章 彼女の感謝はいらない

小山海斗は何度も頷いた。

「はい、俺も見ました」

「急いで記録して」

彼は谷口美桜の手からメモ帳を受け取り、いま起きている変化をひたすら書き留めていく。

「大野会長、ほかに何か感覚はありますか。ふくらはぎは、少しでも……」

「大丈夫。足の指を二本でも動かせるか試してみよう。もう、勝利の一歩目は踏めたんだから」

吉岡誠二が大きく息を吸い込み、目の縁が一気に赤くなる。

大野直哉は車椅子生活が長い。両脚が動かないせいで、会社の実権すら手放してきた。

それでも――いちばん胸を揺さぶられているのは、ほかならぬ大野直哉本人だった。

こんな感覚は、もう何年も味わっていない。

脚と足先を...

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