第211章 昔の出来事

谷口美桜が言い終えた瞬間、会議室は水を打ったように静まり返った。

大野直樹夫婦の件は、大野家では誰も触れようとしない話だ。誰もが口にするのを避けている。

当時から、あの失踪は政界の争いによる影響ではなく、大野家内部の争いが原因だったのではないか――そう疑う声も少なくなかった。

だが、証拠はない。結局、噂は噂のまま立ち消えになった。

大野文也が鼻で笑う。

「証人? 二十何年前の話だぞ。証人がいるって言えば、いることになるのか?」

薄く口角を上げ、挑発するように続ける。

「まさか、俺が人を使ってお前の両親に手を出したって言う気か? あ?」

谷口美桜への不満は、すでに限界を超えてい...

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