第31章 ただの秘書

山﨑蓮は一瞬、言葉を失った。視線が谷口美桜の血の気の引いた顔に落ちる。あの目を見た途端、理由もなく胸の奥がきゅっと締まった。

――それに。

視界の端で、自分が下山柚奈に少し近い位置にいることに気づく。蓮は気取られないよう、左へ半歩だけずらした。

谷口美桜は、きっと嫉妬している。でなければ、こんなに攻撃的になるはずがない。

柚奈が大きな案件を任され、自分が皆の前で彼女を庇った。それが気に食わない。だからわざと突っかかって、拗ねた真似をしている――蓮の頭の中では、そう結論づけられてしまう。

山﨑蓮はそっと目を閉じた。本来なら怒るべきだ。ここで強く止めるべきだ。

だが最近の彼女の様子を...

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