第36章 取引をする

特別病室は静まり返り、エアコンのかすかな唸りだけが耳に残っていた。

下山柚奈はベッドに半身を預け、手の甲の赤みには高価な輸入軟膏が塗られている。

山﨑蓮はベッド脇の椅子に腰を下ろしたまま、どこか上の空だった。

視線が、柚奈の手へ落ちる。

あの目に刺さる赤が、なぜだか谷口美桜を思い出させる。

見てしまったのだ。美桜の掌にも、水ぶくれができていた。

痛みに弱いはずなのに――彼女は一言も洩らさなかった。

「蓮……どうしたの?」

柚奈が小さく呼びかける。

山﨑蓮は眉間を揉み、短く言った。

「別に」

一拍置き、入口に立つ丸山虎太郎へ目を向ける。

「一番いい火傷の薬と、傷痕ケアの...

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