第66章 クズ

初出勤の日、谷口美桜はやけに忙しかった。

けれど山﨑蓮の傍で何年も働いてきたのだ。環境が変わろうが、仕事の流れが変わろうが、身体が追いつかないほどの忙しさだろうが――対応する力は、とっくに身につけている。

手術痕がときどきずきりと疼く。それでも顔色ひとつ変えずに業務を片づけ、ついでに社内の同僚から飛んでくる、露骨な嫌がらせまで淡々と処理した。

ようやく退勤できる、と思った矢先。

葉山賢人が彼女のデスク脇に立ち、こつこつと机を叩いた。

「あとで一緒に外へ出るぞ。夜に重要な接待がある。同行してくれ」

「葉山社長、今日の佐野さんの接待は、私が行く予定じゃ……」

横で書類をまとめていた...

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