第70章 チャンスが必要だ

下山柚奈が書類を差し出してきた。

「開けてみて」

谷口美桜が受け取る。中身は守秘契約書だった。署名日――それは、下山柚奈が「薬を盛られた」直後になっている。

内容は単純だ。関係者全員が口裏を合わせ、薬を盛ったのは谷口美桜だと指し示す。その交換条件として、山﨑蓮が各自の地位と利益を守る。

署名欄には、ホテルの支配人、当夜のスタッフ、さらに山﨑グループの社員が二名分。

最下段にあるのは――山﨑蓮の署名。

「当時のこと、蓮は最初から分かってた。だって、お酒を用意したのはあの人だもの。あの日、本来あの部屋にいるはずだったのは……樹じゃなくて、蓮だった」

下山柚奈は続ける。喉の奥が引っか...

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