第71章 もう決めた

谷口美桜は前田岳斗を困らせなかった。だから前田岳斗も、彼女に手を貸す気になったのだ。

療養院を出ると、谷口美桜はそのまま下山柚奈へ電話をかけた。

「決めたわ」

どこか折れたような、疲れのにじむ声だった。

「紙の証拠は渡す。ただし条件がある。今日中に契約を締結して。明日には原材料を葉山グループへ搬入してもらうこと」

「いいわ」

下山柚奈は、こっそり息を吐いた。

その直後、受話器の向こうから研究開発部の同僚の声が割り込んでくる。

「下山部長、山﨑社長が新設備の購入を承認したそうです。じゃあ研究室の旧設備はどうします?」

「新設備の調達って、1~2か月はかかるでしょ? それまでは...

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