第72章 疑念

谷口美桜は言い終えるなり、葉山賢人にさっと目配せした。二人は言葉もなく息を合わせ、そのままエレベーターに乗り込む。

扉が閉まった瞬間、葉山賢人がやれやれといった調子で口を開いた。

「美桜。さっきのは、さすがに早まっただろ」

「先輩、会社の研究室、少し使わせてください。それと……前に先輩が集めてたでしょう。海外の大学で使う便箋と封筒。少し分けてもらえませんか」

「……それ、何に使うんだ?」

葉山賢人は訝しげに彼女を見る。

「人をだますの」

谷口美桜はぱちりと瞬きをして、あっけらかんと言った。

「大丈夫。契約書は必ず取り戻すから。……それより先輩、会社の資金って、どれくらい動かせ...

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